「教員はどのくらいの人が退職するの?」
「教員は離職率が高いって本当?」
「せっかく教員採用試験に合格しても、すぐに辞めてしまう人は多い?」
これから教員を目指している人にとって、教員の退職率や離職率は気になるポイントの一つです。
特に近年は、教員の長時間勤務やメンタルヘルスなどがニュースになることも多く、「教員は離職率が高い仕事なのでは?」と考える人もいるでしょう。
しかし、教員の「退職者数」と「離職率」は分けて考える必要があります。
この記事では、文部科学省の最新資料をもとに、教員の退職者数、退職率の考え方、定年退職と自己都合退職の違い、教員を辞める理由などについて分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 教員の退職者数はどのくらいなのか
- 教員の「退職率」と「離職率」の違い
- 教員は本当に辞める人が多いのか
- 定年退職と自己都合退職の違い
- 教員を辞める主な理由
- 若手教員の退職について
- 教員を目指す前に知っておきたいこと
教員の退職率はどのくらい?
まず注意したいのが、「教員の退職率」という数字を一つの割合で見るのは難しいということです。
会社員の場合は「離職率」という形で、新しく入社した人のうち何%が辞めたのか、あるいは一定期間にどのくらいの人が離職したのかなどを計算することがあります。
一方、公立学校の教員について文部科学省が公表している資料では、退職者数や採用者数の推移などが示されています。
ここでいう「退職」には、本人が仕事を辞める自己都合退職だけでなく、定年退職なども含まれます。
重要なポイント
「教員の退職者が3万人以上いる」と聞いても、その全員が「仕事が嫌になって辞めた」という意味ではありません。
定年退職など、あらかじめ制度上想定されている退職も含まれているためです。
公立学校教員の退職者数はどのくらい?
文部科学省が公表している「公立小・中学校教員の退職者数・採用者数の推移と見通し」では、公立学校教員の退職者数の推移が示されています。
小学校・中学校・高等学校・特別支援学校を合わせた退職者数は、年度によって大きく変動しています。
| 年度末 | 退職者数 |
|---|---|
| 令和元年度末 | 36,724人 |
| 令和2年度末 | 36,536人 |
| 令和3年度末 | 37,443人 |
| 令和4年度末 | 38,212人 |
| 令和5年度末 | 20,999人 |
| 令和6年度末 | 36,845人 |
このように、年度によって退職者数にはかなりの差があります。
特に令和5年度末は20,999人となっていますが、これは定年退職者数の変動などが影響しているため、単純に「教員の退職が急激に減った」と判断することはできません。
教員の退職にはどんな種類がある?
教員の退職にはさまざまな理由があります。
代表的なものとして、以下が挙げられます。
- 定年退職
- 自己都合退職
- 勧奨退職
- 任期満了などによる退職
- 他の自治体・学校への転職
- 家庭の事情による退職
- 健康上の理由による退職
この中でも、特に「教員の離職率」を考えるときに重要なのが自己都合退職です。
定年退職は、年齢など一定の条件に達したことによる退職なので、「教員という仕事を辞めたくなった」という意味ではありません。
教員を辞める理由は?
教員が退職を考える理由は、人によって大きく異なります。
代表的な理由としては、次のようなものが考えられます。
1.仕事量が多い
教員の仕事は授業だけではありません。
- 授業準備
- 成績処理
- 学級経営
- 保護者対応
- 学校行事
- 校務分掌
- 会議
- 各種調査
- 部活動
など、多くの業務があります。
そのため、仕事量が多く、長時間勤務が続くことが退職を考えるきっかけになる場合があります。
2.職場の人間関係
教員も一つの職場で働く労働者であるため、職場の人間関係が仕事の満足度に影響することがあります。
管理職との関係、同僚との関係、学年団との関係など、さまざまな人間関係があります。
3.児童・生徒への対応
教員にとって児童・生徒との関わりは仕事の大きなやりがいである一方、指導上の難しさを感じる場面もあります。
学級経営、生徒指導、特別な支援を必要とする児童・生徒への対応など、精神的な負担が大きくなる場合があります。
4.保護者対応
保護者とのコミュニケーションも教員の仕事の一つです。
日常的な連絡だけでなく、学校生活や成績、進路、児童・生徒同士のトラブルなどについて対応する場合もあります。
5.仕事内容が自分に合わなかった
「子どもが好きだから教員になったけれど、実際に働いてみると想像していた仕事内容と違った」というケースも考えられます。
教員は、人と関わる仕事であると同時に、書類作成や事務作業なども非常に多い仕事です。
若手教員はすぐに辞める人が多い?
「教員は若手がすぐ辞める」というイメージを持っている人もいるかもしれません。
しかし、退職者全体の数字だけから「若手教員の離職率が高い」と断定することはできません。
教員の退職者数には、長年勤務した教員の定年退職なども含まれるからです。
若手教員の離職について正確に考えるには、年齢別・勤続年数別の自己都合退職者数などを見る必要があります。
教員は「辞める人が多い」というより、退職者の中身を見ることが重要
教員の退職について考えるときは、単純な人数だけを見るのではなく、「なぜ辞めたのか」を見ることが大切です。
例えば、年間3万人の退職者がいたとしても、その大部分が定年退職であれば、若手教員の離職が特に多いという意味にはなりません。
反対に、全体の退職者数が少なくても、若手の自己都合退職が増えているのであれば、教員の働き方を考えるうえで重要な問題になります。
教員の退職者数は今後どうなる?
文部科学省は、公立学校教員の退職者数と採用者数について、今後の見通しも公表しています。
退職者数は年度によって大きく変動するものの、今後も一定数の教員が退職することが見込まれています。
これは、教員の年齢構成や定年退職者の発生などが関係しています。
そのため、教員採用試験を受験する人にとっては、退職者数だけでなく「退職者数に対してどのくらいの教員を新しく採用する予定なのか」を見ることも重要です。
退職者が多いことは、教員採用試験ではチャンスにもなる
教員の退職者が一定数いるということは、教育委員会側から見ると、それだけ新しく教員を採用する必要があるということでもあります。
特に大量退職の時期には、退職者の補充などを目的として採用者数が増えることがあります。
そのため、教員採用試験を受験する人は、単純に「倍率が高いから無理」と考えるのではなく、
- 退職者数
- 採用予定者数
- 受験者数
- 倍率
- 自治体の年齢構成
などをまとめて確認するとよいでしょう。
教員を辞めたいと思ったらどうする?
実際に教員として働いていて、仕事を辞めたいと感じた場合でも、すぐに退職を決める必要はありません。
まずは、何が原因で辞めたいと感じているのかを整理してみることが大切です。
例えば、
- 仕事量が多い
- 職場の人間関係がつらい
- 担任業務が負担
- 部活動が負担
- 保護者対応がつらい
- 学校そのものが合わない
- 教員という仕事自体が合わない
など、原因によって対処方法は異なります。
「今の学校が合わない」のか、「教員という仕事自体が合わない」のかを分けて考えることも重要です。
転職という選択肢もある
教員免許や教員としての経験は、学校以外の仕事でも活かせる場合があります。
例えば、教育関連企業、学習塾、教材会社、研修会社、行政関連の仕事など、教育経験を活かせる仕事があります。
また、教員経験で身につけた、
- コミュニケーション能力
- プレゼンテーション能力
- 文章作成能力
- スケジュール管理
- 人を指導する能力
- 複数の業務を同時に進める能力
などは、さまざまな仕事で活かせる可能性があります。
教員を目指す人が退職について知っておくべきこと
これから教員を目指す場合、「退職率が高いかどうか」だけで教員という仕事を判断する必要はありません。
大切なのは、教員の仕事内容を事前に理解したうえで、自分に合っている仕事なのかを考えることです。
特に以下の点については、教員採用試験を受ける前に確認しておくとよいでしょう。
- 勤務時間
- 残業時間
- 休日勤務
- 給与
- 有給休暇
- 学校の業務内容
- 部活動の負担
- 保護者対応
- 校務分掌
こうした情報を知っておくことで、採用後に「思っていた仕事と違った」というギャップを減らすことができます。
教員の退職についてよくある質問
Q. 教員の退職率は高いですか?
「教員の退職率が何%」と単純に判断するのは難しいです。公表されている退職者数には定年退職なども含まれるため、退職者数だけを見て「離職率が高い」と判断することはできません。
Q. 教員は1年で辞める人が多いですか?
教員の退職者全体には定年退職者なども含まれるため、全体の退職者数だけから「1年以内に辞める人が多い」と判断することはできません。若手教員の離職を調べる場合は、年齢別・勤続年数別のデータを見る必要があります。
Q. 教員の退職者数は増えていますか?
退職者数は年度によって大きく変動しています。定年退職者の多い時期などによって数字が変わるため、単年度の数字だけで増減を判断するのではなく、複数年度の推移を見ることが重要です。
Q. 教員を辞める主な理由は何ですか?
仕事量、長時間勤務、職場の人間関係、児童・生徒への対応、保護者対応、家庭の事情、健康上の理由など、人によってさまざまです。
Q. 教員を辞めた後に転職できますか?
もちろん可能です。教育関連企業、学習塾、教材会社など、教員経験を活かせる仕事もあります。また、教育とは直接関係のない業界へ転職する人もいます。
まとめ:教員の「退職率」は退職者数だけでは判断できない
教員の退職について調べると、「教員はたくさん辞めている」という印象を持つかもしれません。
しかし、ここで注意したいのが、「退職者数」と「離職率」は同じではないということです。
公立学校教員の退職者数には、自己都合退職だけでなく定年退職なども含まれます。
そのため、「年間3万人以上が退職している」という数字だけを見て、「教員は3万人以上が仕事に嫌気が差して辞めている」と考えるのは間違いです。
教員の仕事を考えるときには、退職者数だけではなく、退職理由、年齢、勤続年数、定年退職者数、自己都合退職者数などを分けて見ることが重要です。
また、教員採用試験を受験する人にとっては、退職者数が多いことは採用枠の確保につながる可能性もあります。
この記事の要点
- 教員の「退職率」と「退職者数」は別物
- 公立学校教員の退職者には定年退職なども含まれる
- 退職者数だけでは若手教員の離職状況は判断できない
- 教員を辞める理由は仕事量、人間関係、児童・生徒対応などさまざま
- 退職者数は年度によって大きく変動する
- 教員採用試験では退職者数だけでなく採用予定者数や倍率も確認することが重要
注意
本記事では主に公立学校教員について解説しています。退職制度や退職者数、採用者数などは学校種や自治体によって異なる場合があります。また、「退職者数」は定年退職などを含むため、そのまま「自己都合による離職率」を意味するものではありません。最新の情報については、文部科学省や各自治体・教育委員会の公式情報をご確認ください。