美術の教員採用試験を受験する人にとって、避けて通れないのが「専門教養」です。
教職教養では教育法規や教育心理、学習指導要領などが中心になりますが、専門教養では、美術に関する専門的な知識が問われます。
「美術史を覚えればいいの?」
「デザインや色彩も出る?」
「実技試験とは別なの?」
このように、専門教養の勉強を始めようとしても、どこから手をつければよいのか分からない人も多いでしょう。
この記事では、美術の教員採用試験における専門教養について、
- どのようなジャンルが出題されるのか
- どんな問題形式が多いのか
- どの分野が重要なのか
- どのような問題が出題されるのか
- 効率よく勉強するにはどうすればよいのか
を分かりやすく解説します。
美術の専門教養とは?
美術の専門教養とは、簡単にいうと、美術科の教員として必要となる専門的な知識を問う試験です。
自治体によって試験内容は異なりますが、絵画、彫刻、デザイン、美術史、美術理論、日本美術、東洋美術など、幅広い分野から出題されます。
文部科学省が示している美術科の専門的事項にも、絵画、彫刻、デザイン、美術理論・美術史などが含まれています。
また、自治体によっては専門教養の筆記試験とは別に実技試験を実施しています。
例えば愛知県では、筆記試験として「教科専門」を実施し、美術については実技試験も実施しています。
そのため、
専門教養=筆記試験
実技試験=デッサン・構成などの実技
というように分けて考えると分かりやすいでしょう。
美術の専門教養で出題される主なジャンル
美術の専門教養では、主に次のような分野から出題されます。
| 分野 | 主な出題内容 |
|---|---|
| 日本美術史 | 仏教美術、絵巻物、狩野派、琳派、浮世絵など |
| 西洋美術史 | 古代、中世、ルネサンス、バロック、近代、現代美術など |
| 東洋美術 | 中国・韓国などの美術、仏教美術など |
| 絵画 | 絵画技法、材料、表現方法、作家・作品など |
| 彫刻 | 彫刻材料、技法、作家・作品など |
| デザイン | デザインの基礎、構成、色彩、デザイン史など |
| 美術理論 | 美術用語、鑑賞、表現、造形要素など |
| 色彩 | 色相、明度、彩度、配色、色彩心理など |
| 工芸 | 陶芸、染織、漆芸、金工など |
| 美術教育 | 学習指導要領、美術科の目標、内容など |
ただし、すべての自治体で同じ内容が出題されるわけではありません。
実際に東京都では、中学校・高等学校共通の「美術」の専門教養問題を公開しています。また、広島県・広島市でも「芸術(美術)」の専門教育科目の問題と採点基準が公開されています。
そのため、志望自治体の過去問を確認することが非常に重要です。
① 日本美術史
日本美術史は、美術の専門教養で重要な分野の一つです。
特に覚えておきたいのが、
- 飛鳥時代
- 奈良時代
- 平安時代
- 鎌倉時代
- 室町時代
- 桃山時代
- 江戸時代
- 明治以降
といった時代ごとの美術です。
例えば、
「この作品を制作した人物は誰か」
「この作品が制作された時代はいつか」
「この流派の特徴として正しいものはどれか」
といった問題が考えられます。
代表的な人物としては、
- 運慶
- 快慶
- 雪舟
- 狩野永徳
- 長谷川等伯
- 俵屋宗達
- 尾形光琳
- 葛飾北斎
- 歌川広重
- 伊藤若冲
などが挙げられます。
単純に人物名だけを暗記するのではなく、
「人物・作品・時代・流派・特徴」
をセットで覚えることが重要です。
② 西洋美術史
西洋美術史も専門教養では非常に重要な分野です。
大きな流れとして、
古代 → 中世 → ルネサンス → バロック → 新古典主義 → ロマン主義 → 写実主義 → 印象派 → ポスト印象派 → 20世紀美術 → 現代美術
という流れを押さえておきましょう。
特に近代以降は、さまざまな美術運動が登場します。
例えば、
- 印象派
- ポスト印象派
- フォーヴィスム
- キュビスム
- 表現主義
- ダダイスム
- シュルレアリスム
- 抽象表現主義
- ポップ・アート
- ミニマル・アート
- コンセプチュアル・アート
などです。
代表的な作家と作品を関連付けて覚えると、問題に対応しやすくなります。
例えば、
モネ → 『印象・日の出』
ゴッホ → 『ひまわり』『星月夜』
ピカソ → 『ゲルニカ』
ダリ → 『記憶の固執』
といった形です。
③ 絵画
絵画分野では、作品や作家だけでなく、材料・技法・表現方法についても勉強しておく必要があります。
例えば、
- 油彩
- 水彩
- アクリル
- 日本画
- フレスコ
- テンペラ
- 版画
- 鉛筆
- 木炭
などです。
また、
「この技法は何か」
「この画材の特徴として正しいものはどれか」
「この作品に使用されている技法は何か」
といった形式の問題にも注意しましょう。
④ 彫刻
彫刻では、
- 木彫
- 石彫
- ブロンズ
- 粘土
- 石膏
- 彫刻技法
- 彫刻史
- 彫刻家と作品
などが出題範囲になります。
日本では、
- 運慶
- 快慶
- 円空
などの仏像彫刻に関する知識も重要です。
西洋では、
- ミケランジェロ
- ロダン
- ブールデル
など、代表的な彫刻家を押さえておきましょう。
⑤ デザイン
デザインも美術教員採用試験では重要な分野です。
主な内容として、
- デザインの原理
- 構成
- 平面構成
- 立体構成
- ポスター
- タイポグラフィ
- グラフィックデザイン
- デザイン史
- 色彩
- ユニバーサルデザイン
などがあります。
特に、
「形・色・構成」
に関する基礎知識はしっかり身につけておきたいところです。
⑥ 色彩
色彩に関する問題も対策しておきましょう。
例えば、
- 色相
- 明度
- 彩度
- 三原色
- 補色
- 類似色
- 暖色・寒色
- 色の三属性
- 色彩心理
- 配色
などです。
「補色の組み合わせはどれか」
「明度が最も高い色はどれか」
「この配色の特徴は何か」
といった問題が考えられます。
色彩は比較的、知識を整理して覚えやすい分野なので、苦手な人は早めに対策しておくとよいでしょう。
⑦ 美術理論・美術用語
美術史だけでなく、美術に関する専門用語も重要です。
例えば、
- 遠近法
- 透視図法
- 陰影
- 明暗
- 構図
- 比例
- バランス
- リズム
- コントラスト
- シンメトリー
- アシンメトリー
などがあります。
「言葉は知っているけれど、説明できない」という状態にならないように、それぞれの意味を理解しておきましょう。
⑧ 工芸
自治体によっては工芸に関する知識も出題されます。
例えば、
- 陶芸
- 染織
- 漆芸
- 金工
- 木工
- 工芸史
- 日本の伝統工芸
などです。
日本の伝統美術や工芸については、美術科の専門的事項としても位置付けられています。
⑨ 美術教育・学習指導要領
「専門教養だから美術史だけ勉強すればいい」と考えるのは危険です。
自治体によっては、美術科の指導法や学習指導要領に関する内容が専門的事項として扱われます。
特に確認したいのは、
- 美術科の目標
- 表現と鑑賞
- 造形的な見方・考え方
- 中学校美術科の内容
- 高等学校芸術科の内容
- 美術科における評価
- 主体的・対話的で深い学び
などです。
「この学習活動は、表現と鑑賞のどちらに関係するか」
「美術科の目標として正しいものはどれか」
といった問題への対策になります。
美術の専門教養で多い問題形式
専門教養の問題形式も自治体によって違います。
代表的なのは次の形式です。
① 選択問題
最も対策しやすいタイプです。
例えば、
「次の作家と作品の組み合わせとして正しいものを選びなさい。」
というような問題です。
知識があれば、比較的短時間で解答できます。
② 正誤問題
文章を読んで、
正しいか・間違っているか
を判断する形式です。
例えば、
「印象派は、主に19世紀後半のフランスで発展した。」
というような文章について判断します。
この形式では、細かい知識まで問われる場合があります。
③ 組み合わせ問題
人物・作品・時代・美術運動などを組み合わせる問題です。
例えば、
「作家と作品の組み合わせとして正しいものを選べ」
という形式です。
美術史を勉強するときに、
作家だけでなく作品名まで覚える
ことが重要になります。
④ 作品画像を使った問題
美術の専門教養では、作品画像を見て答える問題も対策しておきたい形式です。
例えば、
「この作品の作者を答えなさい。」
「この作品が属する美術運動を答えなさい。」
「この作品が制作された時代を答えなさい。」
などです。
画像を見たときに、
「見たことがある」→「作者・作品名・時代が分かる」
という状態を目指しましょう。
⑤ 記述問題
自治体によっては、単なる選択問題だけではなく、記述形式が含まれる場合があります。
大阪府の過去問でも、美術について筆答問題だけでなく、記述解答用紙や記述解答例が公開されています。
そのため、志望自治体の過去問を確認し、
「選択式なのか、記述式なのか」
を早い段階で把握しておくことが重要です。
美術の専門教養は「広く浅く」から始める
美術の専門教養は、とにかく範囲が広いのが特徴です。
最初から一つの分野を完璧にしようとすると、勉強が進まなくなってしまいます。
そこで最初は、
日本美術史
↓
西洋美術史
↓
近現代美術
↓
絵画・彫刻
↓
デザイン・色彩
↓
工芸
↓
美術理論
↓
美術教育
というように、全体を一度確認するのがおすすめです。
その後、過去問を解いて、
「自分の自治体では何がよく出るのか」
を確認します。
特に重要なのは「美術史」
美術の専門教養対策で、まず重点的に勉強したいのが美術史です。
ただし、単純な暗記では効率がよくありません。
例えば、
「マティス=フォーヴィスム」
だけではなく、
マティス → フォーヴィスム → 色彩を重視 → 『赤い部屋』など
というように関連付けて覚えます。
同じように、
ピカソ → キュビスム → 『アビニヨンの娘たち』『ゲルニカ』
のように、作家・運動・作品をセットで覚えていきましょう。
過去問は必ず確認しよう
専門教養の勉強で最も重要なのが、志望自治体の過去問を確認することです。
自治体によって、
- 問題数
- 配点
- 出題ジャンル
- 選択式・記述式
- 実技試験の有無
- 美術教育分野の出題割合
などが異なるからです。
例えば東京都は、美術の専門教養について実際の問題・正答・配点を公開しています。
また、広島県・広島市も美術の専門教育科目の試験問題や採点基準を公開しています。
このような自治体公式の過去問を利用して、
「何が出ているのか」
を確認してから勉強すると、効率が大きく変わります。
美術の専門教養で覚えておきたい4つのポイント
最後に、専門教養対策で特に意識したいポイントをまとめます。
① 美術史を時代の流れで覚える
作家名だけを暗記するのではなく、
時代 → 美術運動 → 作家 → 作品 → 特徴
という流れで覚えましょう。
② 作家と作品をセットで覚える
「この作家は知っているけれど、代表作が分からない」という状態を避けます。
③ デザイン・色彩・美術理論も忘れない
美術史だけに偏らず、デザイン、色彩、技法、美術用語なども勉強しましょう。
④ 志望自治体の過去問を分析する
全国の傾向だけではなく、
「自分が受験する自治体では何が出るのか」
を確認することが重要です。
まとめ
美術の教員採用試験における専門教養は、非常に広い範囲から出題されます。
主なジャンルは、
- 日本美術史
- 西洋美術史
- 東洋美術
- 絵画
- 彫刻
- デザイン
- 色彩
- 工芸
- 美術理論
- 美術教育
などです。
また、問題形式も、
- 選択問題
- 正誤問題
- 組み合わせ問題
- 作品画像問題
- 記述問題
など、自治体によって違います。
そのため、まずは美術全体の基礎知識を身につけ、そのうえで志望自治体の過去問を分析することが合格への近道です。
「美術史だけ」「作家名だけ」といった偏った勉強ではなく、幅広い分野をバランスよく学習していきましょう。
美術教員採用試験の専門教養は、勉強する範囲が広いからこそ、出題されやすい分野を整理して効率よく覚えることが大切です。
