教員採用試験の論作文では、「いじめ」は非常に出題されやすいテーマの一つです。
例えば、
- いじめの未然防止について、あなたの考えを述べなさい。
- いじめを早期発見するために、教師としてどのような取組を行うか。
- いじめのない学校をつくるために、担任としてどのように取り組むか。
- いじめを認知した場合、学校としてどのように対応すべきか。
といったテーマが考えられます。
しかし、いじめについて書こうとすると、
「いじめは絶対に許されない」
「児童生徒に寄り添いたい」
「いじめのない学校をつくりたい」
という内容だけで終わってしまう人も少なくありません。
論作文では、「いじめはよくない」という気持ちだけではなく、教師として具体的に何をするのかまで書くことが重要です。
この記事では、教員採用試験の論作文で「いじめ」をテーマにされた場合の書き方を、具体例とともに解説します。

いじめの論作文で最初に押さえたいポイント
いじめについて論作文を書くときは、次の4段階を意識すると文章を組み立てやすくなります。
① 未然防止
↓
② 早期発見
↓
③ 組織的な対応
↓
④ 再発防止
この4つを軸にすると、「精神論だけの論作文」になりにくくなります。
特に重要なのが、教師一人で解決しようとしないことです。
文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」でも、いじめへの対応について、一人の教職員が抱え込むのではなく、学校が一丸となって組織的に対応することが必要だとされています。
したがって、論作文では、
「私は担任として一人で解決する」
ではなく、
「学年、管理職、生徒指導担当、養護教諭、スクールカウンセラー等と情報を共有し、組織的に対応する」
という視点を入れると、教師としての実践性を示しやすくなります。

「『未然防止→早期発見→組織的対応→再発防止』の4軸を意識すると、説得力のある論作文になります!
いじめについて論作文を書くなら「定義」を知っておこう
いじめのテーマが出題されたとき、最初に知っておきたいのが「いじめの定義」です。
いじめ防止対策推進法では、いじめは、一定の人的関係にある児童生徒から、心理的または物理的な影響を与える行為を受け、その行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているものとされています。
ここで重要なのは、「本人が苦痛を感じているか」という被害児童生徒側の視点です。
そのため、
「冗談だった」
「本人も笑っていた」
「クラスではよくあることだ」
といった理由だけで、教師がいじめではないと判断するのは適切ではありません。
論作文でも、
「教師の主観だけで判断するのではなく、児童生徒の立場に立って事実を把握する」
という視点を入れることができます。



法律上の定義を押さえ、『被害児童生徒がどう感じているか』の視点で書くことが重要です!
いじめの論作文は「4段構成」で書く
いじめをテーマにした論作文は、次の構成を覚えておくと書きやすくなります。
第1段落:問題提起
いじめについての自分の基本的な考えを書く。
第2段落:未然防止・早期発見
日頃からどのような学級づくりをするのかを書く。
第3段落:いじめを認知した場合の対応
誰と連携し、どのように対応するのかを書く。
第4段落:教師としての決意
具体的な取組を継続していく姿勢を書く。
この構成なら、600字・800字・1000字など、さまざまな文字数の論作文に応用できます。



構成に迷ったら『問題提起・未然防止と早期発見・対応・決意』の4段構成で組み立てましょう。
① 最初の段落では「いじめを許さない」という基本姿勢を書く
最初の段落では、いじめに対する自分の基本的な考えを示します。
例えば、
いじめは、児童生徒の安心して学ぶ権利を脅かし、心身の成長に大きな影響を与える重大な問題である。そのため、教師は、いじめを未然に防ぐとともに、わずかな変化も見逃さず、早期発見・早期対応に努める必要がある。
という書き方ができます。
ここで大切なのは、単に、
「いじめは絶対に許されない。」
だけで終わらせないことです。
その後に、
「だから教師として何をするのか」
につなげましょう。



姿勢を示すだけでなく、『だから教師として何をするのか』という行動までセットで書きましょう!
② 未然防止では「学級づくり」を書く
いじめをテーマにした論作文では、未然防止について具体的に書くことが重要です。
例えば、
- 互いの違いを認め合う学級づくり
- 児童生徒同士の人間関係づくり
- 自分の気持ちを安心して伝えられる環境
- 道徳教育
- 人権教育
- 学級活動
- 相手の立場を考える活動
などが挙げられます。
特におすすめなのが、
「児童生徒が安心して過ごせる学級づくり」
という視点です。
例えば、
日頃から、児童生徒一人一人のよさや努力を認め、互いの違いを尊重できる学級づくりを進める。また、授業や学級活動を通して、自分と異なる考えを受け入れることの大切さを指導し、相手を尊重する人間関係を育てる。
という形にできます。
「仲良くしましょう」だけでは具体性がありません。
どのような教育活動を通して、どのような児童生徒を育てるのか
まで書きましょう。



単に『仲良く』ではなく、どんな教育活動を通してどんな意識を育てるか具体的に示しましょう。
③ 早期発見では「小さな変化を見逃さない」と書く
いじめの論作文で非常に使いやすいキーワードが、
「早期発見」
です。
文部科学省は、定期的なアンケート調査や教育相談などを通して、いじめの実態把握に取り組むことや、児童生徒がいじめを訴えやすい雰囲気をつくることを示しています。
論作文では、例えば次のように書けます。
早期発見のため、日頃から児童生徒の表情や友人関係、休み時間の過ごし方、遅刻や欠席などの変化を丁寧に観察する。また、定期的なアンケートや教育相談を実施し、児童生徒が悩みを相談しやすい環境を整える。
ここでポイントになるのが、
「観察+アンケート+教育相談」
です。
一つの方法だけではなく、複数の方法を組み合わせることで説得力が増します。



『日常の観察+アンケート+教育相談』のように、複数のアプローチを組み合わせると具体性が増します!
④ SNS・インターネット上のいじめにも触れる
現在のいじめについて書くなら、インターネット上のいじめにも触れておくとよいでしょう。
文部科学省による令和6年度調査では、インターネット上のいじめは約2万7千件で、前年度から増加しています。SNS等を利用したいじめは外部から見えにくく、匿名性が高いという特徴があるとされています。
そのため、
また、SNSや一人一台端末を利用したいじめは、教師から見えにくい場合がある。そのため、情報モラル教育を充実させるとともに、児童生徒が困ったときに相談できる環境を整える。
といった内容を入れることができます。
ただし、ネットいじめについて書きすぎる必要はありません。
「現代の学校現場を理解している」ということを示すための一要素
として使うとよいでしょう。



見えにくいネットいじめに触れることで、現代の教育課題を把握していることをアピールできます。
⑤ いじめを認知したら「一人で抱え込まない」
いじめの論作文で特に重要なのがここです。
もし、
「いじめを発見したら、私が児童生徒から話を聞き、指導する。」
だけで終わってしまうと、学校組織としての対応が見えません。
そこで、
「組織的対応」
という言葉を入れます。
例えば、
いじめを認知した場合には、担任だけで抱え込むことなく、速やかに管理職や学年主任、生徒指導担当等に報告し、学校いじめ対策組織と情報を共有する。その上で、事実関係を丁寧に把握し、被害児童生徒の安全と安心を最優先に対応する。
という書き方ができます。
文部科学省も、いじめへの対応について、学校が一丸となって組織的に対応することを重視しています。



一番大切なのは『組織的対応』!学年や管理職、専門職と情報共有して対応する姿勢を示しましょう。
⑥ 被害児童生徒への支援を書く
いじめの対応を書くときに忘れてはいけないのが、
被害児童生徒への支援
です。
例えば、
まず、被害児童生徒の話を丁寧に聴き、安全を確保するとともに、「あなたは悪くない」という姿勢で寄り添う。また、本人の意向を尊重しながら、保護者とも情報を共有し、継続的に様子を見守る。
という内容です。
重要なのは、一度話を聞いて終わりにしないことです。
いじめは、その場の指導だけで解決するとは限りません。
そのため、
- 継続的な見守り
- 教育相談
- 保護者との情報共有
- 学校内での情報共有
などを入れると、より実践的になります。



『あなたは悪くない』と伝える安心感と、一度で終わらせない『継続的な見守り』がポイントです!
⑦ いじめをした児童生徒への指導も書く
被害児童生徒への支援だけではなく、いじめを行った児童生徒への指導についても触れましょう。
例えば、
いじめを行った児童生徒に対しては、行為の背景や本人の思いを丁寧に把握しながら、相手を傷つける行為は許されないことを毅然として指導する。また、自らの行為を振り返り、相手の立場を考えられるよう継続的に支援する。
という書き方ができます。
ここでは、
「厳しく叱る」だけにしない
ことがポイントです。
「なぜその行為をしたのか」という背景を把握しながら、必要な指導・支援につなげるという視点を持ちましょう。



毅然とした指導に加え、『なぜその行動に至ったのか』の背景に寄り添う視点も入れましょう。
⑧ 保護者・専門機関との連携も入れる
さらに評価されやすい論作文にするなら、
保護者や専門機関との連携
について触れます。
例えば、
必要に応じて保護者に丁寧に説明し、学校と家庭が共通理解をもって児童生徒を支援できるようにする。また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の専門職とも連携し、学校だけでは対応が難しい課題についても適切な支援につなげる。
という形です。
文部科学省も、いじめへの対応において、学校だけでなく関係機関と連携した対応を求めています。



SC(スクールカウンセラー)や家庭と力を合わせる姿勢を示すことで、実践性の高さをアピールできます!
いじめの論作文で使えるキーワード
試験前に、次の言葉を覚えておくと便利です。
| キーワード | 使い方 |
|---|---|
| 未然防止 | いじめが起こりにくい学級づくり |
| 早期発見 | 小さな変化を見逃さない |
| 早期対応 | 認知した段階で迅速に対応 |
| 組織的対応 | 一人で抱え込まず学校全体で対応 |
| 情報共有 | 教職員間で情報を共有 |
| 教育相談 | 児童生徒の悩みを把握 |
| アンケート | いじめの実態把握 |
| 人権教育 | 相手の人権を尊重する態度を育成 |
| 道徳教育 | 他者を尊重する心を育てる |
| 保護者との連携 | 家庭と学校で共通理解を形成 |
| SC・SSWとの連携 | 専門的な支援につなげる |
| 継続的な見守り | 一度の指導で終わらせない |
| 再発防止 | 事後の学級・学校づくりにつなげる |
| 情報モラル教育 | SNS等のトラブルを防止 |



『組織的対応』や『未然防止』など、評価されやすい教育用語を自然に盛り込みましょう!
【例文】教員採用試験の論作文「いじめの未然防止について」
最後に、実際の論作文として使える形にまとめてみます。
いじめは、児童生徒の安心して学ぶ環境を脅かし、心身の成長にも大きな影響を与える重大な問題である。そのため教師には、いじめを未然に防ぐとともに、小さな変化を見逃さず、早期発見・早期対応につなげることが求められる。
私は、まず互いの違いを認め、尊重できる学級づくりに取り組む。日頃の授業や学級活動において、一人一人の考えやよさを認める機会を設け、相手の立場に立って考える態度を育てる。また、道徳教育や人権教育を学校教育全体を通して充実させ、他者を尊重する意識を育てていく。
次に、いじめの早期発見に努める。日常の授業や休み時間における児童生徒の表情や友人関係、遅刻・欠席などの変化を丁寧に把握するとともに、定期的なアンケートや教育相談を実施する。児童生徒が「先生に相談してもよい」と思える関係を築き、困ったときに声を上げやすい環境を整える。
いじめを認知した場合には、担任だけで抱え込まず、速やかに管理職や学年主任、生徒指導担当等と情報を共有し、組織的に対応する。被害児童生徒の安全と安心を最優先にするとともに、保護者とも丁寧に連携する。また、いじめを行った児童生徒についても、行為の背景を把握しながら、相手を傷つける行為は許されないことを毅然として指導し、再発防止につなげる。
教師として、いじめを「特別な問題」と捉えるのではなく、日々の児童生徒理解と学級づくりの中で未然防止に取り組みたい。そして、わずかな変化も見逃さず、学校全体で情報を共有しながら、児童生徒が安心して学び、互いを尊重できる学校づくりに努めていく。
まとめ|「いじめ」は具体的な行動まで書けば強い論作文になる
いじめの論作文で大切なのは、単に「いじめはいけない」と主張することではありません。
「教師として具体的に何をするのか」
まで書くことがポイントです。
特に、
未然防止
↓
早期発見
↓
組織的対応
↓
被害児童生徒への支援
↓
加害児童生徒への指導
↓
保護者・専門機関との連携
↓
再発防止
という流れを意識しましょう。
なお、文部科学省が公表した令和6年度の調査では、全国の小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は769,022件で、過去最多となっています。重大事態も1,405件と過去最多でした。
そのため、教員採用試験でいじめがテーマになった場合には、単なる精神論ではなく、現在の学校現場を踏まえた「未然防止・早期発見・組織的対応」について具体的に論じることが重要です。
特に覚えておきたいのは、
「いじめを見つけたら、自分一人で解決する」のではなく、「学校全体で早期に認知し、組織的に対応する」
という視点です。
この考え方を軸にすれば、「いじめの未然防止」「いじめの早期発見」「いじめを認知した際の対応」など、さまざまな論作文テーマに応用できます。








